一〇〇年前の世界一周

一〇〇年前の世界一周

一〇〇年前の世界一周

20世紀初頭、ある裕福なドイツ人青年ワルデマール氏が決行した、世界一周旅行記。作り物ではない、当時のリアルな世界を写真と回想録からトレースすることができる一冊。

ドイツにいること自体を窮屈に感じるようになっていた。自分自身の中にある壁、自分の周りにある壁を打ち破り、別の世界を発見することを渇望した。この裕福で安定した世界の向こう側で、生き生きと脈打つ世界を。

旅人は身軽に旅をしたがるものだ。自分の良心、他社に対する思いやり、世界情勢の考察といった荷をも手放してしまうことがある。同時に旅は偏見を矯正する体験でもある。旅が進むにつれワルデマールの視界は広がることになる。

そしてワルデマール氏33歳の時、世界一周旅行が始まる。

20世紀初頭のアメリカには過去と現在の姿が濃厚に入り交じっていた。砂漠の中で金を探し求める者がいる一方、ロックフェラーのような三つぞろいのスーツに身を包んだ資本家が王国を築き始めていた。乗合馬車で過酷な旅をし、西部劇に出てくるような酒場で休む者がいると同時に、都会では高架を走る地下鉄路線が建設され、摩天楼がそびえていた。極端な現実が混在していた時代だ。

極端な現実の混在、どこかで聞いたフレーズだなと思った。反映前夜の典型的な姿なんだろうな。
日本は特に気に入ったらしく、写真も素晴らしいものが多かった。

特に熱燗は「一気に体にまわり、華やいだ気分にさせる」と称賛した。茶道の精神にも興味を持った。都会では西洋風のホテルに泊まることが多かったが、「この上なく清潔で異国情緒にあふれ、細かい心遣いが行き届いた旅館」の方を好んだ。

買ったときは意外にブ厚いなと思っていたのだけど、100年前にタイムスリップした気分のうち、あっという間に読み終えた。
最近、デジタル一眼レフカメラを買おうかと思っていて、自分好みの画が撮れそうな機種を探すべく、Flickrの写真を漁りまくっている。ワルデマール氏の写真の構図は素晴らしく、非常に参考になったのは意外な収穫。

来月から半年ほどアメリカ出張することになったので、いろんなものをおさめていきたいと、あらためて思いました。