ザッポス

ザッポスの奇跡(改訂版)?アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略?

ザッポスの奇跡(改訂版)?アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略?

靴のオンライン小売サービスを展開する、ザッポス。常識からはありえないサポートサービスで有名になったザッポスに密着した著者が、2009年に出した本の改訂版。ところどころ文字が太字になっていて、個人的に多少の気持ち悪さを感じる本ではあったけれど、関係者のインタビューをベースに、ザッポスの真意みたいなところも十分に伺える一冊。

一日の時間のうち10%でもいい。『社員と、顧客に幸せをとどける』、その研究に、みんなが心を預けたら、会社はどう変わりますか?

これらすべては、もちろん、かなりお金がかかることです。でも、顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはないのです

サービスの現場では、みんながマニュアルに沿って、同じことをやっていれば価値が生産される、というわけにはいかないのです。サービスの価値とは感情であり、人(顧客)と人(働く人)との触れ合いのなかではじめて生まれるもの

サービスの時代と言われながらも、全面的にこのようなスタンスを表明して、実践している企業はなかなか見られない。一方で、アメリカだからこそ極端に盛り上がっている感もやっぱりあって、日本のサービスは平均的に高いから、ザッポスのように突出した例がなかったり、目立ちにくかったりするのかなあ、とも思う。そういう意味では、みならうべき文化やサービスレベルを実現している例は、ザッポスじゃなくてもよいのだろうなと感じた。

社員が顧客と直接つながることで、顧客の生活のなかに、いつも「ザッポス」がいる状況を作りたいと望んでいるからです。
かつて、「近所のお店」と「顧客」は、顔見知りの仲でした。ウェブは、「企業」と「顧客」が、これに似た関係を築くことを可能にします。

社員にTwitterの使用を推奨しているザッポス。ザッポスに限らず、インターネットを使って、楽しさや面白さが倍増する仕組みになればいいなと常々感じる。


創業者のTony Hsiehは自伝も出版していて、そちらもなかなか面白い。

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

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それでも、私たちはみずからの事業を営み、自分の運命を自分でコントロールしたかったのです。大事なのはお金ではなく、退屈しないことだったのです。

ある日、私は目覚ましのアラームを六回止めて、ようやく目を覚ましました。そして七回目のアラームを止めようとしたところで、突然気づいたのです。最後にこれほど何回もアラームを止めたのは、オラクルに出社するのが嫌で嫌でたまらなかった時でした。同じことがまた起こったのです。

単なる金儲け以上のことをしようとするなら、ゲームは何倍も楽しくなる

ザッポスが顧客に提供するのは「忘れ難い体験」であって、「幸せのデリバリー」とTony Hsiehは言う。たまたま扱っているのが「靴」なだけ、で、今後どんな「幸せのデリバリー」を見せてくれるのか、他人事じゃなく楽しみだ。