奇跡のリンゴ

井口さんの厨房で、二年前から保存されていた、二つに割ったりんごを目にしました。通常、りんごは切ったまま置いておくと、すぐに変色し、やがては腐ってしまいます。しかし、その木村さんのりんごは腐ることなく、まるで「枯れた」ように小さくしぼんでいました。そして、赤い色をほのかに残したまま、お菓子のような甘い香りを放っていたのです。

冒頭のこの部分だけ本屋で読んで、思わず読みたくなった。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

木村が狂ったひとつのものとは、いうまでもなくリンゴの無農薬栽培だ。
今現在ですら、それは不可能だと言う専門家は少なくない。
農薬を使わなければ、リンゴを収穫することはできない。
現実のリンゴ栽培を知る人にとって、それは常識以前の問題なのだ。

というリンゴ栽培方法の常識を超えて、無農薬でのリンゴ栽培に成功した、木村秋則さんの物語。

結局、木村さんのリンゴが何故腐らないか、はよくわからないんだけど、文字通りひとつのものに「狂った」末に成し遂げた、木村さんのストーリーとして面白かった。

とは言いつつも、幼い頃から機械の分解に興味をもち、原始的なコンピュータ製作に取り組もうとして、真空管が足りずに挫折し、高校時代にはアンプ、オートバイのエンジンに没頭するという、木村さんのなんともエンジニアリング魂溢れる素養に一番惹かれたのだけど。