パンと価値

ルヴァン*1に行ってきた。サンドイッチとチーズフランスパンを買って、2階で食べる。借りている本を読み切って、のんびりする。扇風機で熱い番茶を冷まして飲む。うまい。

マリス博士の奇想天外な人生 (ハヤカワ文庫 NF)

マリス博士の奇想天外な人生 (ハヤカワ文庫 NF)

彼女とのドライブ中にノーベル賞のアイデアをひらめいたというマリス博士が、LSD、女性問題、サーフィン等々、様々な体験を告白する自伝。科学と非科学とのバランスを実に上手くとっている人だなと思った。

すべてのことは可能性にすぎない。しかし、現在、われわれは自分達の財産を間違ったテーブルの上に賭けているのだ。われわれの五感が感じることのできないような問題の探求に税金が使われている。
あまりに微小なもの、もしくはあまりに巨大なものに囚われることは、われわれ人間に得体の知れない傲慢さを与える。

マリス博士は始終、科学にはいらない利権が絡み過ぎていることを実体験を元に説く。だけどそれはアンチ科学を主張しているわけではない。また、科学に携わっている人は往々にして、過去より現在の方が全てにおいて優れていると考えがちだけど、マリス博士は占星術に興味をもち、古代より蓄積された膨大な情報を一重に科学的じゃないという理由で一掃することに疑問を投げかける。

うまく人と関わるためには、双方がつねに有益な取引きをしていると思えることが重要なのだ、というのが彼の言い分だった。

これはマリスの親友ハリーの言葉なんだけど、とても良くわかる。金銭的な損得勘定ではなくて、自分の中の価値をどれだけ与え合えるかということなんだろうなぁ。
最後に訳者の福岡伸一氏との対談があるんだけど、これがまた面白い。

福岡 この辺にあるようなポルシェとかメルセデスとかに乗ろうとは思わない?
マリス うん、なんていうのかな。ステイタスをクルマで見せよう、というにはまったく私のテイストじゃないんだ。

このへんはどこに価値を置くかという話になってくる。日経のこの記事*2を思い出した。細木先生が某番組でちゃんちゃら可笑しい話を持ち出してお怒りになっていたけど。車をステイタスとする人がマジョリティな時代は終わった、てこと。いや、まだまだ多いかな。少なくとも自分と、記事で調査対象となった人は終わったと思ってる。
それにしても、いい本だった。そして福岡伸一氏の文章は相変わらず好きですね。fujitasu107氏、ありがとう。