シンプリシティの法則

以前1度読んでうまく消化できなかったんだけど、最近あらためて読んでみた。

シンプリシティの法則

シンプリシティの法則

シンプリシティ(単純さ)というと、昨今巷にあふれてる、バズワード感も否めない印象だったんだけど、著者なりのシンプリシティを実現するための10の法則と、3の鍵を考えてみると、なるほどなあと思う点が多々あった。

著者のJohn Maedaはデザインの専門家なので、プロダクトデザインにシンプリシティが適用できるのはもちろん、働き出して1年経った自分の生活も、最近コンプレクシティ(複雑さ)が増した、というか毎日が雑になってきている感覚があったので、見直してみるいい機会になった。

シンプリシティ=健全さ

私が若々しい情熱をもってシンプリシティの問題に取りかかった当初は、こんなふうに感じていたものだ。コンプレクシティは私たちの世界を破壊しているから、それを阻止しなければならない!その後ある会議で講演したときのこと。73歳になる老アーティストが私を脇へ連れ出すと、こう言った。「世界はいつだって崩壊してきたんだ。だから、リラックスするといい」。彼はおそらく正しい。そこで、彼のアドバイスにしたがって、できれば何かに「背をもたれて」本書を読むようにしてほしい。

このくだりを読んでなんとなく思い出したのが、タモリ座右の銘「やる気のある者は去れ」だったんだが。*1

法則1 削減

シンプリシティを実現する最もシンプルな方法は、考え抜かれた削減を通じて手に入る。
  • Shrink 縮小
    • 小さくて地味なモノが期待以上の働きをすると、私たちは驚くだけでなく喜ぶものだ。
  • Hide 隠蔽
    • 精巧な隠し扉や小さな画面によってコンプレクシティを隠すことは、明らかなごまかしである。このごまかしが意地悪ではなく魔法のように感じられれば、隠されたコンプレクシティは邪魔というより楽しみになる。
  • Enbody 具体化
    • 隠蔽や縮小のあとで、失われた高価値感をモノにまとわせることだ。

ある程度悩んで、答えが出なかったらそれは捨てていいのかもしれない。また必要に応じて浮かび上がってくるものだと思う。

法則6 コンテクスト

シンプリシティの周辺にあるものは、決して周辺的ではない。

じかに向き合っているものだけでなく、周囲のあらゆるものに意味を見いだそうという目標である。

シンプリシティの周辺にあるものは、決して周辺的ではない。第6法則が強調するのは、デザインのプロセスで失われてしまうかもしれないものの重要性である。直接関係しているように見えるものでも、周囲にあるほかのあらゆるものとくらべて、まるで重要でないこともある。

存在するものが減れば、私たちはあらゆるものをはるかに深く理解するのである。

シンプリシティって、へばりついた泥を落とす作業というよりも、何が重要で、より本質的かを考える行為だから、ただ落とせばいいってもんじゃない。
本質的なものを浮かび上がらせるために、そうでないものとの区別が必要。

法則7 感情

感情は乏しいより豊かなほうがいい。

美しいデザインのiPodのキャリングケースが売れている点について

シンプリシティを備えた製品向けのキャリングケースは、2つの重要な目的を達成している。
...
理想的な家庭用電子機器がまとう氷点下のクールさと人間的な暖かさのバランスをとる必要性である。核となるモノが純粋で、シンプルで、クールな飾り気のなさを維持する一方、モノを包む衣装はそれを温かく、陽気で、またその気になればきわめて突飛なものとしておける。シンプルなモノと多くの追加的アクセサリーを組み合わせることによって、消費者は自分の感情とモノへの思い入れを表現するというメリットを手にするのである。

私たちの社会、組織、人工物は、配慮、注意、感情への積極的なかかわりを必要としている-こうしたものの事業価値は直ちに明白とは言えないかもしれないが。

このへんって、大学院での研究でフォーカスしてた部分だよなあ。似たようなこと考えてる人は世界中にいそうだ。

法則8 信頼

私たちはシンプリシティを信じる。

B&Oが焦点を合わせているのは音の質ではない。「背をもたれる」こと・・・ただ何かを楽しむことの質なのだ。
...
私たちが本当にリラックスできるのは、全幅の信頼を置ける人の手のなかで、この上ない善意をもって扱ってもらえる場合だけである。

シンプリシティは、クールで機械的な状態を目指すわけじゃない。著者は日系で、日本に住んでいたこともあるらしいので、日本的価値感もたびたび出てくる。漢字や寿司、茶などなど。

人生

あなたの全人生がたった1つの骨董品の棚にまで切り詰められるとしたら、どんな思い出を安置するだろうか?人生とは複雑なものかもしれない。だが最後には、マークの言葉に耳を傾ければ、人生とは単純なものなのだ。

とはいえ、この感覚を日々の生活に落とし込むにはもうちょっと理解が必要だなあ、と感じてしまった。