宇宙からの帰還

宇宙からの帰還 (中公文庫)

宇宙からの帰還 (中公文庫)

誕生日にもらって、往復の通勤時間をフルに使って読んだ。
飛行士達の情事や、宇宙飛行の裏話、また、地球を出ること、宇宙空間に漂うこと、ひいては月から地球を眺める、という実体験が、人間の意識にもたらす様々を、宇宙飛行士へのインタビューを通じて描いた1冊。たくさんの宇宙飛行士へインタビューしているので、基本的に主張はバラバラ。もうなんかコメントしようにも上手いことできない。引用だけ。
神はいるか、信じるか、というテーマが全体を貫いていて、とにかく、何か参考になるかと言えばならないし、だけど宇宙飛行士達の心境をトレースする感じが面白くて、夢中になって読んで、気付いたら終わってた、という読書体験でした。

裏話編

「40歳を超した大人が、宇宙でスーパーマンごっこをして大喜びするんだ。宇宙では、ほんとにスーパーマンと同じように空を飛べるんだからね。あの恰好をまねて飛ぶんだ。いくらやっても、あればかりはあきないね。」

「宇宙船からの眺めの中で、最も美しい眺めの1つが、日暮れ時の小便だ。1回の小便で、1千万個くらいの微小な氷の結晶ができる。それが太陽の光を受けてキラキラ7色に輝き、えもいわれず美しい。信じがたいほど美しい。」

これでいこうということになった。ヒューストンとボストンのMITのコンピュータ技術者が直ちに集められ、大あわてで新しいプログラムが開発された。それに費やされた時間が1時間半あまり。そのプログラムをすぐに月着陸船に送信し、ミッチェルがそれをインプットした。それが終わったのは、降下開始予定時刻のわずか30秒前だった。

意識編

「宇宙から地球を見ているとき、冒涜的表現を使えば、自分はいま神の眼で地球を見ている、自分はいま神の位置に自分を置いているのだという感覚があった。それに対して、月の上では、いま自分は神の前にいるのだという感覚があった。」

「たしかに宇宙で、地球が宇宙船だという認識は持ったし、人類の未来について新しいヴィジョンを持ったということはある。しかし、あくまでそれはテクノロジスト、ヒューマニストとしての立場からだった。地球という星の信じがたいほどの美しさ、月世界の完璧な静寂さ、全き不毛さといったものにも感動したが、それはあくまで感覚的なもので、スピリチュアルなものではなかった。」

「宇宙から地球を見るとき、そのあまりの美しさにうたれる。こんな美しいものが、偶然の産物として生まれるはずがない。ある日ある時、偶然ぶつかった素粒子素粒子が結合して、偶然こういうものができたなどということは、絶対に信じられない。地球はそれほど美しい。何らの目的なしに、何らの意思なしに、偶然のみによってこれほど美しいものが形成されるということはありえない。そんなことは論理的にありえないということが、宇宙から地球を見たときに確信となる。」

「どんな体験をしても、その体験が体験者にとって有意味である場合もあれば、無意味になることもある。そのちがいは、その体験に対して心を開くかどうかこの体験の持つ意味を全部吸収してやろうと思って心を開くかどうかにかかっている。体験に対して心を開かなければ、どんな体験もメカニカルにすませ、無意味に終わらせることができる。」