生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

7月はほとんど本を読めてないのだけど、これは素晴らしい本だった。自分達が普段なんとなく感じている生命観を、現場の研究者として論理的にかつドラマティックに書き上げている。やや大袈裟にしかも誤解を恐れずに言うと、文系目線からは客観的事実を伴ったひとつの文学作品として、理系目線からは小説の要素を含んだバイオサイエンスのレポートとして、位置づけていい気がする。

生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。生命とはどのようなものかと問われれば、そう答えることができる。
P.271

結局、私達が明らかにできたことは、生命を機械的に、操作的に扱うことの不可能性だったのである。
P.272

このボリュームで700円そこそこって、新書冥利に尽きるなぁ。最近は新書の玉石混交が甚だしくていまいち手を出しにくいけど、今回このような良い本に巡り会えてとても嬉しい。