純喫茶ローレンス

金沢にきたのに、兼六園にも21世紀美術館にも寄らずに喫茶店にきてしまった。





薄暗い階段をあがり、恐る恐るそのドアをあけて中に入ると、女主人はこう言った。

「あなたはお客様?」

とまどって答えられずにいると、主人は続ける。

「いえ、お客様じゃない方もたくさんいらっしゃるものですから、取材とかね、その他にもたくさん・・・。お客様でしたらいらっしゃいませ。」

かろうじて「客、です」と答える。

「どちらに座りますか。こちらは五木寛之さんがものを書かれていたソファよ。もうずいぶん昔のことだけれど。今はもうこないわ」

後で知ったことだけど、五木寛之氏は以前、この喫茶店に入り浸り、執筆活動に勤しんでいたそうだ。直木賞受賞の知らせも、この喫茶店で受けたのだとか。
そのソファには先客がいたので、奥の別席に腰を下ろす。

「何をご注文なさる。こちらがメニューです、とはいっても半分ぐらい出せないけれど。右半分は全滅です、左半分もこれとこれは出せません。純適当喫茶なのよ。
アイスコーヒーでいいのね、それなららくちんよ、冷蔵庫から出すだけだから。」

まだ自分の身に何が起こっているのか理解できずに、アイスコーヒーを注文する。











「植物が形を保ったまま、枯れていく姿が好きなの。だって、人間も同じでしょ」

「見て、このお花、今朝までつぼみだったのに、あっという間にこんなに開いたのよ。」


黒電話とシルバーの真新しい冷蔵庫。枯れた花と、今朝はつぼみだった花。目の前の109ビルと、純喫茶ローレンス。今、自分がどこにいるのか忘れかけるような時間だった。

というわけで、今日は結婚式です。盛大に祝ってきたい。

ザッポス

ザッポスの奇跡(改訂版)?アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略?

ザッポスの奇跡(改訂版)?アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略?

靴のオンライン小売サービスを展開する、ザッポス。常識からはありえないサポートサービスで有名になったザッポスに密着した著者が、2009年に出した本の改訂版。ところどころ文字が太字になっていて、個人的に多少の気持ち悪さを感じる本ではあったけれど、関係者のインタビューをベースに、ザッポスの真意みたいなところも十分に伺える一冊。

一日の時間のうち10%でもいい。『社員と、顧客に幸せをとどける』、その研究に、みんなが心を預けたら、会社はどう変わりますか?

これらすべては、もちろん、かなりお金がかかることです。でも、顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはないのです

サービスの現場では、みんながマニュアルに沿って、同じことをやっていれば価値が生産される、というわけにはいかないのです。サービスの価値とは感情であり、人(顧客)と人(働く人)との触れ合いのなかではじめて生まれるもの

サービスの時代と言われながらも、全面的にこのようなスタンスを表明して、実践している企業はなかなか見られない。一方で、アメリカだからこそ極端に盛り上がっている感もやっぱりあって、日本のサービスは平均的に高いから、ザッポスのように突出した例がなかったり、目立ちにくかったりするのかなあ、とも思う。そういう意味では、みならうべき文化やサービスレベルを実現している例は、ザッポスじゃなくてもよいのだろうなと感じた。

社員が顧客と直接つながることで、顧客の生活のなかに、いつも「ザッポス」がいる状況を作りたいと望んでいるからです。
かつて、「近所のお店」と「顧客」は、顔見知りの仲でした。ウェブは、「企業」と「顧客」が、これに似た関係を築くことを可能にします。

社員にTwitterの使用を推奨しているザッポス。ザッポスに限らず、インターネットを使って、楽しさや面白さが倍増する仕組みになればいいなと常々感じる。


創業者のTony Hsiehは自伝も出版していて、そちらもなかなか面白い。

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

それでも、私たちはみずからの事業を営み、自分の運命を自分でコントロールしたかったのです。大事なのはお金ではなく、退屈しないことだったのです。

ある日、私は目覚ましのアラームを六回止めて、ようやく目を覚ましました。そして七回目のアラームを止めようとしたところで、突然気づいたのです。最後にこれほど何回もアラームを止めたのは、オラクルに出社するのが嫌で嫌でたまらなかった時でした。同じことがまた起こったのです。

単なる金儲け以上のことをしようとするなら、ゲームは何倍も楽しくなる

ザッポスが顧客に提供するのは「忘れ難い体験」であって、「幸せのデリバリー」とTony Hsiehは言う。たまたま扱っているのが「靴」なだけ、で、今後どんな「幸せのデリバリー」を見せてくれるのか、他人事じゃなく楽しみだ。

美術手帖6月号が面白い

美術手帖 2011年 06月号 [雑誌]

美術手帖 2011年 06月号 [雑誌]

ユーザが一番いるところに会社があったほうがいい。絵を描きたくて、見せたくてしょうがない人たちはもうすでに緩やかにネットワーク化されていて、世界中でつながっている。普通のビジネスマンは「そんなサイトあるの?」と知らなくても、絵を描く人は実はみんな使っているという状況が理想。ネットメディアにpixivが取り上げられることと、ユーザーが増えることとはもはや関係ないでしょう。

コメントなんて絵文字だけにしたほうがいいくらい。

Why do I do it?

サイモン シネックの、「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」を観た。

日本語字幕はこちら
サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか | TED Talk


人は、"What" でなく、"Why" に従って動くのだという。自然と、今の仕事にあてはめて考えると、期初に上からふってくる目標ありきで仕事をしていた自分にとって、動機は "What" ばかり。そこに "Why" はあったのだろうか。"Why" を探していたのだろうか。
うちの会社は、6月から新しい1年が始まる。"Why"、をよく考えてみたい。

太陽熱発電

太陽発電には大きく二種類あって、太陽光のエネルギーをを直接電力に変換する方式(太陽光発電)と、太陽光を集光して作った水蒸気で、タービンを回して電力へ変換する、太陽熱発電という方式があることを知った。
太陽熱発電 - Wikipedia
4/16号のThe Economistでは、米BrightSource社が手がけるIvanpahという太陽熱発電システムについて取り上げていた。Ivanpahでは、大量のHeliostatsと呼ばれるミラーで太陽光をタワー型のボイラーに集光して水蒸気を作る。その水蒸気でタービンを回し、発電するというもの。カリフォルニア州に建設されているらしい。

非常に巨大な施設で資金が必要だが、先日Googleが1億8600万ドルの投資を発表した。カリフォルニア州の14万世帯の電力を賄うことができるとのこと。

Desert dawn - Solar power
http://ivanpahsolar.com/

非常に脆弱に見えるのだけど、太陽光を利用したひとつのエネルギー源として、有力みたい。

春・京都

結婚式に招かれて、京都にいってきた。少し早めに着いたので、のんびり京都観光ができた。その記録をば。
それにしても、一年で一番良い時期に行けたんじゃないかと思う。こんな素晴らしい土地で学生生活を送った人たちが、心から羨ましい。





  • 二条城





Flower Power

激務が続く毎日だけれども、桜並木で有名な、九段下は千鳥ヶ淵に行ってきた。例年は激しいライトアップの元、大勢の見物客で賑わう地域だけど、今年はライトアップなし人少なし、と、本来の夜桜を味わうにはもってこいのシチュエーション。





夜桜って、月明かりや人の生活の明かりの中、ぼんやりと浮かび上がってくるもので、そこに一種の風情が感じられるものだと思っている。この日も堀の向こうにぼんやりと浮かぶしだれざくらがとてもよかった。というようなことを考えていたら、毎年この時期には同じことを感じているなと思った。ブログにも書いてた。

この季節には毎年思うことだけど、日が暮れてわざわざライトアップした桜を夜桜と呼ぶ神経は理解できない。さらに日本の風情だとか言われるとちゃんちゃらおかしい。まぁ、誰にも言われてないけど。風情を感じることは素敵な感覚だと思うし、それこそ日本人特有のものもあるのだろうけど、人工的に作り上げて強制してしまうと身も蓋もなくなる。気持ち悪いし
季節とか風情とか - HDIF?

折しも、Big Pictureで花特集が組まれていた。日本の桜も、ぽちぽちピックアップされているので見物です。なんといってもタイトルがよい。
Flower power - Photos - The Big Picture - Boston.com